
岡内伸二 「障がい者雇用への挑戦と学び」コラム(連載) –
新しい組織を支える“人”の選択
障がい者雇用を進めるにあたり、意識の高い人材に関わってもらうため、社員の中から公募を行いました。どれほど応募があるか不安もありましたが、実際には優秀な経歴と高い評価を持つメンバーが手を挙げてくれました。
最終的には、事業所の運営だけでなく、社内外との調整力も必要と考え、グループ会社の店舗責任者を務めていた方に参画してもらうことにしました。
結果としてこの判断は非常に良く、障がい者社員に対して対等な目線で向き合いながら、組織運営や調整も的確に行ってくれました。こうして体制が整い、2006年4月、花椿ファクトリーはスタートしました。
工場からオフィスへ広がる仕事
工場での取り組みが順調に進んだことで、次は汐留オフィス内に事務作業の拠点を立ち上げました。
ここでは販促物の袋詰め、名刺作成、ごみ回収に加え、全フロアの機密書類回収とシュレッター業務を担うことにしました。もともとは社員が各階で個別に行っていた作業でしたが、これを障がい者社員の仕事として再設計し、回収ボックスの設置や大型裁断機の導入など、運用面も整備しました。
業務を進める中で、社員から「回収頻度を見直したほうがよいのでは」という意見が出され、基準棒を使った回収ルールへと改善されました。現場から生まれた工夫でした。
“考えて動く”力が組織を成長させる
知的障がいのある社員が、自ら考え、提案し、業務改善を行う。これは当初の想定を超える出来事でした。
この成功体験をきっかけに取り組みは全国へと広がり、大阪をはじめ複数の拠点へ展開されるようになりました。現場の力が組織を動かしていく実感を得ることができました。
資生堂が掲げる障がい者雇用のポリシー
資生堂のホームページを見ると今でも「障がい者雇用のポリシー」として
① 本気で期待する
② 必要な配慮はするが特別扱いはしない
③ 一生懸命働きたい情熱のある社員を積極的に応援する
という言葉が残されています。
これはすべての障がいの方々の採用に対してのポリシーですが、知的障がい者も同じです。本気で期待し、特別扱いはしない、一生懸命働きたい社員を応援する。とても大切なことだと思っています。ただこれはあくまでもこういう社員を募集していますよ、という会社としてのポリシーです。私はこの①②③を持って入ってきた社員たちに、さらに成長してもらうことが、会社の役割だと思います。そのためにも(これは健常者の社員にも言えることですが)自分で考えることができる社員、自律した社員に育てることが大切だと思います。
考えると言ってもそんなに簡単なことではありません。まずは管理職が、部下に対して考える機会をつくること、部下が考えている間はひたすら待つこと、そうやって考えて出てきたことであれば挑戦するチャンスを与えること、そして、もし失敗したら叱るのではなく、なぜ失敗したのか一緒に考え、またチャレンジすること。
私はそうすることでひとり一人の社員が成長し、会社も成長すると信じています。

岡内 伸二(おかうち しんじ)
三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社 丸ノ内ホテル
管理兼人事部人権・ダイバーシティ推進室 専任マネージャー
大学卒業後、資生堂に入社。広島・東京の販売部門でキャリアを積み、新規事業部や秘書室を経て人事部で人権啓発を担当。資生堂時代から障がい者支援や人権啓発に取り組み、特例子会社「花椿ファクトリー」の設立に携わり、初代社長を務める。その後、丸ノ内ホテルにて人権啓発担当として活動を継続。東京都人権啓発センターの講師や東京人権啓発企業連絡会の啓発委員としても活動し、50回以上の講演実績を持つ。2025年4月より就労移行支援・就労定着支援事業所HOPE神田 企業支援アドバイザーを務める。
