岡内伸二 「障がい者雇用への挑戦と学び」コラム(連載) –
ライバル企業での見学
最後に見学させていただいた事業所が、化粧品のライバル会社でもあるK社の特例子会社でした。担当の方とはハローワークに紹介された研修会で知り合ったのですが、「本来ならライバル会社の方の工場見学を受け入れることはないのだけど、障がい者雇用の世界は別です。お互いに協力して、知的障がい者の育成、会社運営のノウハウを勉強しあって障がい者雇用をともに進めていきましょう」と言っていただき、見学させていただきました。
資生堂よりも2年前から企画していて、私が訪問した際は工場がちょうど運営を始めたばかり。別棟の小さな工場で、新工場の塗装のにおいが残る中、我々が想定していた作業と同じ内容が実施されており、考えに間違いがなかったと実感できました。大変勉強になり、今でも感謝しています。
できる仕事、やれる場所を探して
「Where(どこで)」「What(何を)」「How(どのように)」の検討が必要になり、社内で調べたところ、知的障がい者を雇用しているのは工場のみで、作業は衣類のクリーニングや園芸植物の手入れといった軽作業に限られていました。
既存の仕事を奪わず、安定した作業量を確保するため、工場担当役員に「工場内に特例子会社を設けたい」と相談。条件として安全配慮など制約を守ることを求められた上で、了承を得ました。社員との協議の末、シール貼りや箱詰め、梱包作業を担ってもらうことで合意しました。
鎌倉工場は東京から遠く、知的障がいある方の通勤面で不安がありましたが、墨田に残っていた工場が候補に挙がり、そこを活用することに。これで「どこで・何を・どうやって」がクリアになりました。
収益が出るように
会社設立に向けて最大の課題は、収益性でした。私は「納付金がゼロになるのだから赤字でもいいのでは」と考えていましたが、経営側は「赤字前提の設立は認められない」と譲らず、計画の見直しを迫られました。
その後、現場では想像以上の努力と工夫が積み重ねられていきました。たとえば、数を数えるのが苦手な社員のために「10個しか入らない容器」を使ってミスを防いだり、箱詰め後に重さを量って中身を再確認するなど多くの工夫が加えられました。
一緒に働く社員たちの支えがあってこそ、知的障がいのある社員たちが力を発揮できる環境が整い、結果として生産性も計画を超えるまでに成長していきました。こうして何とか会社設立の許可が下りて、次に行ったのが社員集めでした。
岡内 伸二(おかうち しんじ)
三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社 丸ノ内ホテル
管理兼人事部人権・ダイバーシティ推進室 専任マネージャー
大学卒業後、資生堂に入社。広島・東京の販売部門でキャリアを積み、新規事業部や秘書室を経て人事部で人権啓発を担当。資生堂時代から障がい者支援や人権啓発に取り組み、特例子会社「花椿ファクトリー」の設立に携わり、初代社長を務める。その後、丸ノ内ホテルにて人権啓発担当として活動を継続。東京都人権啓発センターの講師や東京人権啓発企業連絡会の啓発委員としても活動し、50回以上の講演実績を持つ。2025年4月より就労移行支援・就労定着支援事業所HOPE神田 企業支援アドバイザーを務める。
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