岡内伸二 「障がい者雇用への挑戦と学び」コラム(連載) –
前回記事 「特例子会社設立の準備、小さな工場から広がった大きなチャレンジ」(第3回)
障がい者スタッフの採用活動
まずはハローワークに相談して何度か合同説明会、合同面接会を開催しましたが、思ったほど人が集まりませんでした。この時、手を差し伸べてくださったのがハローワークの雇用指導官の方でした。HOPE神田のような就労移行支援事業所をご紹介いただき、支援事業所の方からは、知的障がい者といっても、苦手なこと・得意なことが一人ひとり違うということを、就労訓練の現場で教えていただきました。
実際に訓練中の方の中から、我々が考えている業務に適した人を数名ご紹介いただきました。また、特別支援学校の先生もご紹介いただき、見学にも行きました。そうした支援者の皆さんと連携しながら、採用面接へと進んでいきました。
面接で大切にした“気持ち”と“姿勢”
面接で最初に見ていたのは、面接に来た方が「言われたから来ている」のか、「本当に働きたいと思っている」のかという点でした。ここが最も大切で、判断は難しいものの、慎重に見極めるようにしていました。
さらに面接で重視したのは、以下の2点です(これは支援センターの方々から学んだことでもあります)。
① 安定して働けるかどうか(体力・集中力・働く意欲・自己管理能力)
② コミュニケーション能力があるか(報連相、質問姿勢、話を聞く態度、ビジネスマナー)
うまく気持ちを表現できない方もいますが、それでも「働きたい」という気持ちが伝わってくる方を選びました。結果として、これが良い採用につながったと思います。
業務設計と職場見学の大切さ
知的障がいといっても特性はさまざまで、黙々と同じ作業を好む人もいれば、時間ごとに作業が変わった方が力を発揮できる人もいます。そういった違いを理解し、スタッフ全員で業務の適性を見極めていくことが重要でした。
想像と違う仕事だったり、自分のこだわりを把握せずに選んだ仕事が合わず、長く続かないこともありました。花椿ファクトリーは定着率が高いほうでしたが、やはりミスマッチも発生します。そのためにも事前に職場見学や職場体験をしてもらうことが大切だと感じました。
入社後は、障がい特性を職場で共有し、支援が一部の人に偏らないよう、チーム全体で支えることを大切にしてきました。
働く上でのサポートと周囲の理解
知的障がいのある方の中には、集団のルールを守ることや、自分の役割を把握することが難しい場合があります。研修や定着支援サービスを活用し、社会人としての基本的なルールや職場での“暗黙の了解”を、一緒に考えながら丁寧に伝えていくことが必要です。
また、困った時にどうすればいいか分からない、注意された理由が理解できずに悩む、報連相そのものが苦手、という方もいました。そういった方には「報告を待つ」のではなく、定期的に様子を見に行く・話しかける・進捗確認をするなど、日常的な見守りや声かけが有効でした。普段から相談しやすい関係を築くことも、受け入れる側の大切な責任だと思います。
仕事の習得に時間がかかることもあります。作業の手順をメモにして机に貼ったり、絵や写真を活用して視覚的に伝えたりといった工夫をしました。
同時に複数の指示を出すと混乱してしまう方には、一つずつ順を追って伝えるようにしました。時間感覚を身につけるのが難しい方もおられるので、スケジュールを紙に書いたり、同僚の声かけで支えることで、仕事がスムーズに進むようになりました。
どれだけの量をどれくらいの時間でできるかを見通すのが難しい方も多くいますが、ちょっとした工夫で環境は大きく変えられると実感しました。こうして、一緒にはたらくメンバーが揃いました。
岡内 伸二(おかうち しんじ)
三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社 丸ノ内ホテル
管理兼人事部人権・ダイバーシティ推進室 専任マネージャー
大学卒業後、資生堂に入社。広島・東京の販売部門でキャリアを積み、新規事業部や秘書室を経て人事部で人権啓発を担当。資生堂時代から障がい者支援や人権啓発に取り組み、特例子会社「花椿ファクトリー」の設立に携わり、初代社長を務める。その後、丸ノ内ホテルにて人権啓発担当として活動を継続。東京都人権啓発センターの講師や東京人権啓発企業連絡会の啓発委員としても活動し、50回以上の講演実績を持つ。2025年4月より就労移行支援・就労定着支援事業所HOPE神田 企業支援アドバイザーを務める。
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