
岡内伸二 「知的障がいがある方を採用する企業側の視点①」コラム –
企業が最初に見ている「働く土台」
企業が知的障がいのある方を採用するときは、まず次のような「働く土台・基本」があるかどうかを確認します。
・決まった時間に通えるか
・決められた場所に落ち着いていられるか
・基本的なルールを守ろうとする姿勢があるか
・一度覚えた仕事を、同じように繰り返し続けられるか
知的障がいのある方は、単純作業や同じ工程の繰り返しなどに集中して取り組める方が多く、企業もその点に期待し、評価しています。
私が設立に携わった花椿ファクトリーでも、「休憩!」の合図があるまで、疲れた様子も見せずに同じ作業を続ける社員の姿を見て、大変驚いたことを覚えています。
「毎日コツコツ同じことを続けられるか」「約束を守れるか」が、実は企業にとって大きな評価ポイントになっています。
採用面接で本当に見ていること
採用の場面で企業が見ているのは、テストの点数や作業スピードだけではありません。
障がい者採用に携わったおかげで、多くの異業種の採用担当者の方々とお話しする機会がありましたが、多くの企業が共通して話されるのは、「働く土台・基本」は最低限の前提であり、そのうえで次のような点を重視しているということです。
・体調や生活リズムがある程度安定しているか
・コミュニケーションが極端に苦手ではないか
・職場のルールや雰囲気になじもうとする姿勢があるか
・長く働き続けてくれそうか
つまり、「何ができるか」だけでなく、
・周りと関わろうという気持ちがあるか
・安心して仕事を任せられそうか
・長く勤めたいと思っているか
という、人柄や姿勢も大切な評価軸になっています。
「安心して任せられる人」とは
企業が「この人なら安心して仕事を任せられる」と感じるのは、次のような方です。
・できることと苦手なことを、周りと一緒に整理していける
・分からない時に、黙り込まず誰かに聞こうとする
・失敗しても投げ出さず、もう一度やろうとする
・サポートや配慮を受けながらも、「自分の仕事」という意識を持とうとしている
完璧である必要はありません。
むしろ、「助けてもらいながらも、自分の役割を果たそうとする人」は、多くの企業にとって非常に大切な存在です。

岡内 伸二(おかうち しんじ)
三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社 丸ノ内ホテル
管理兼人事部人権・ダイバーシティ推進室 専任マネージャー
大学卒業後、資生堂に入社。広島・東京の販売部門でキャリアを積み、新規事業部や秘書室を経て人事部で人権啓発を担当。資生堂時代から障がい者支援や人権啓発に取り組み、特例子会社「花椿ファクトリー」の設立に携わり、初代社長を務める。その後、丸ノ内ホテルにて人権啓発担当として活動を継続。東京都人権啓発センターの講師や東京人権啓発企業連絡会の啓発委員としても活動し、50回以上の講演実績を持つ。2025年4月より就労移行支援・就労定着支援事業所HOPE神田 企業支援アドバイザーを務める。
