障がい者の職場定着率
障がい者の就労継続を促進する目的で、今年度から、定着支援が、”障害福祉サービス”「定着支援事業」となりました。就労移行支援事業所や就労継続支援事業所を経て就職した方が定着支援を受ける際は、「障害福祉サービス受給者証の申請」と「定着支援事業所との契約」が必要になります。
障がい者の職場定着率は、就労1年以内で50%~70%という状況にあります。(下表『障害者の就業状況等に関する調査研究』/2017 JEED )
具体的には、障がい者雇用枠での就労や障がいを職場に伝えた上での就労(オープン)や、障がい者であることを職場に伏せた就労(クローズ)で、定着率のデータは異なります。また、支援機関のサポートがあるかないかでも定着率は異なりますが、いずれにしても、全体的に定着率を高めていこうという動きになっています。
何のための定着支援か?
障害者総合支援法では、就労移行支援事業所を経て就職した方の職場定着支援は、就職後6ヵ月間は就労移行支援事業所が行うこと(義務)となっています。就職後7ヶ月目以降はというと、地域の就労支援センターや就業・生活支援センターに支援を引き継いだり、そのまま就労移行支援事業所が支援を行ったりと、各事業所によって関わり方や取り組み方が大きく異なっているのが現状で、就職後に支援が途切れてしまうというようなケースも見受けられました。
定着支援事業は、就職後7ヶ月目以降、3年6ヶ月に至るまで、定着支援事業所の定着支援を受けられるという障害福祉サービスです。7ヶ月目以降も、支援が途切れることないように、支援主体を明確にして就労継続に取り組みましょうという制度です。
サービスですので、各事業所は、就職後3年6ヶ月に至るまでに、どんな定着支援を行うか、サービス内容を示します。就職後も3年間の定着支援を行います、月に1回の定期面談を実施します、などです。
ここで忘れてはならないのが、“何のための定着支援か” です。
HOPE神田は、2011年の開所以来、就労継続を目的とした就労支援と定着支援を行って参りました。就職後6ヶ月はもちろん、7ヶ月目以降も、企業側の要請や本人の支援の必要性を考慮し、定期的な関わりを持つことと、地域の支援機関との連携を目指して参りました。
一例として、就職後5年経っても定期企業訪問をしている方がいらっしゃいます。職場にも十分に慣れ、就労は安定していて、特にトラブルが懸念されているわけでもありません。2ヶ月に1回、支援員が会社に伺い、担当者とお会いし、本人の様子や人事異動など会社の動きを確認します。
一見普通の定着訪問ですが、会社のニーズとしては、支援機関の職員である私たちと定期的に接触することで、今後の障がい者雇用に役立つ情報を得たいという目的があります。私たちも可能な限りのアドバイスをさせていただきます。
「長い期間、職場訪問をしています」という話ではなく、企業側の(障がい者雇用の)ステージにあった関わり方を行い、企業側の障がい者雇用や雇用継続力の向上に寄与することも、職場定着支援の一つの目的ではないかと考えています。本人の自立も大切ですが、企業側の障がい者雇用継続力も職場定着に大きく影響するからです。
HOPE神田の定着支援
先日、都内の某就労支援センターの所長にお話を伺う機会がありました。地域の就労支援センターと定着支援事業所がどう連携していくか、どのような連携が望ましいか、大変勉強になるお話でした。
これまでHOPE神田が行ってきた定着支援の方向を見失わないよう、制度ありきの支援にならないよう、あらためてHOPE神田の定着支援のあり方を考えさせられました。
<HOPE神田の定着支援の目的>
① 将来的な本人の自立と、就労先企業の雇用継続力の向上
② 居住地域の支援機関(就労支援センター等)との連携と支援主体の段階的移行
③ HOPE神田との継続的な関わり
制度に添いながらも、柔軟に対応できるよう、これからも定着支援に努めて参りたいと考えております。
施設長